Research

原子核構造

 原子核は核子(陽子と中性子)が強い相互作用に基づく核力によって寄り集まった核子多体系であり、その性質を調べるためには大規模な数値計算を必要とします。現在確立されている最も基本的な物理理論は標準模型と呼ばれ、強い相互作用のほかに電磁相互作用と弱い相互作用を取り込んだ基本理論として、様々な分野で成功をおさめています。原子核分野でも、格子QCD理論による数値計算の手法が発展し、核子レベルではある程度の成功を収めています。また、軽い原子核ではカイラル対称性などの基本的な対称性のみから出発するカイラル有効場の理論による研究が進められており、こちらも近年発展している研究領域の一つです。
 一方、私たちが研究している質量数が大きい原子核では、これらの第一原理計算を行うことは今をもって非常に困難であり、全く別のアプローチを必要とします。私たちが重い原子核を理論的に研究するためのツールとして利用しているのが、原子核殻模型や集団運動模型といった理論モデルです。これらの理論モデルでは、100以上の核子のうち原子核の構造に大きくかかわる数個~10個程度の核子だけに着目して、原子核全体の構造を記述します。これらの理論モデルは重い原子核のみならず様々な領域で広く利用されており、原子核の振動や変形などの運動に加え、ベータ崩壊やガンマ崩壊の様子を理論的に再現することに成功しています。
 原子核構造に関する最近のトピックスとしては、軽い原子核での原子核ハロー・中性子スキンや逆転の島などの特徴的な原子核構造、超重核での新元素(113番元素:ニホニウム)の発見などが挙げられます。また、中重核や重い原子核にも関連する話題として、ニュートリノレス・ダブルベータ崩壊や原子核シッフモーメントによるCP対称性の破れなどの標準模型を超える物理の探索が挙げられます。さらに、宇宙での重元素合成過程(R-process)や、中性子星の内部構造の理解などへの応用的な課題にも注目が集まっています。


ニュートリノレスダブルベータ崩壊

 単独で存在する中性子はおよそ15分で陽子に崩壊し、その過程で電子と反電子ニュートリノを放出します(ベータ崩壊)。原子核中の中性子もベータ崩壊を起こすことがあり、その寿命は原子核によって様々です。原子核には、偶々核1)は隣の(陽子数と中性子数が一つずつ異なる)奇々核1)に比べて基底状態のエネルギーが低いという特徴があります。そのため、偶々核の中には、通常のベータ崩壊が起こることはないが、2度続けて起こることは可能なものがいくつかあります(ダブルベータ崩壊)。実際に、このダブルベータ崩壊を起こす原子核が10例ほどみつかっています。
 このダブルベータ(2νββ)崩壊では通常のベータ崩壊が続けて2度起こるので、反電子ニュートリノを2つ放出します。これに対して、ニュートリノレス・ダブルベータ(0νββ)崩壊は、反電子ニュートリノが1つも放出されないダブルベータ崩壊です。0νββ崩壊が起こるためには、電子ニュートリノがマヨラナ粒子である必要があります。マヨラナ粒子とは、粒子とその反粒子が同じ粒子であるような粒子のことです。ニュートリノがマヨラナ粒子である可能性はかなり以前から指摘されていて、例えばニュートリノの質量が電子など他のフェルミ粒子に比べて非常に小さいことを自然に説明する機構として有力視されているシーソー機構が実現するためには、ニュートリノがマヨラナ粒子である必要があります。現在(2018年5月24日17:12)のところ、0νββ崩壊はまだ発見されていませんが、日本のKamLAND-Zen実験(136Xe)やCANDLES実験(48Ca)を含め、世界中で探索実験が盛んに行われています。
 0νββ崩壊は特定の原子核中でしか起こらないため、0νββ崩壊の半減期を計算するためには原子核の波動関数が必要になります。私たちは、76Ge原子核や136Xe原子核の波動関数を殻模型などで計算し、それらの波動関数を用いて0νββ崩壊の半減期の計算を行っています。

1)偶々核(奇々核):陽子数と中性子数がともに偶数(奇数)の原子核。


江幡研究室での研究内容については

 こちら


CP対称性の破れ・シッフモーメント

 編集中...


中性子星

 編集中...